10月度の審査で2段に合格されたHさんの感想です。
10月23日
自分にとっての合気道
私は、平成20年11月に新宿の合気会本部道場にて合気道を始めました。入会した理由は、何か一つの武道を有段者になるまで稽古して自分を鍛え直したいとの思いからでした。
始めは受身の取り方も全くわからないゼロからの出発でした。稽古の前日にDVDを繰り返し見て、取り敢えず手順を記憶して稽古に臨むという事の繰り返しでした。二つ覚えて一つ忘れるといった感じの進み方で永久に初段には手が届かないのではないかと稽古の後で度々落胆していた記憶があります。しかしながら継続する事、一つ一つ積み重ねていく事の効果は大きく平成24年12月には初段審査に合格致しました。
稽古では始めは技を覚える事の達成感に夢中になりましたが、級が進んでいくに従い受けを取る事の楽しさに惹かれるようになりました。更に自分自身の体の様々な感覚が開発され、また自身の内面が変化していく事を実感し、その新鮮な驚きも稽古に打ち込む動機になっていきました。
平成27年8月に大阪に転勤になると同時に、大阪合氣塾へ入会して稽古を再開しました。相手を崩せていない、姿勢が悪く下を向いている、間合いが不適切といった課題の数々を痛感する事となり、多少なりとも持っていた自信は掻き消されました。それからは初心に戻ってゼロからやり直すつもりで稽古に取り組んできました。
これまでの9年間の合気道の稽古を通じて得たものとして、先ず心身の健康を頂いたことが挙げられます。体全体が無理なく年をとってからでも鍛えられた事は勿論ですが、精神的に以前より強くなれたことが自分にとって一番の大きな変化であり財産です。(初めのレベルが低かったので、ようやく人並みになれたレベルかも知れませんが。)
合気道の稽古は、決して楽ではなく身体的にきつくなりますが、終わった後に前向きで充実感に満たされた気持ちになり、また精神的には解放される感覚もあります。これは合気道独特の稽古法に因るところが大きいと考えます。段や級に分け隔てなく交互に4回ずつ技を掛け合うという一見シンプルなこの独自の稽古法によって皆が平等に前向きな気持ちで稽古に臨むことができているのだと思います。そして、この稽古を長く続けることで心と体の安定が得られるのだと考えます。須磨師範は、お腹(丹田)を鍛錬してしっかりと持つことが重要であり、これによって道場においても日常においても自分自身を見失わずにいられる様になるとおっしゃられますが、最近少し実感できるようになりました。
また合気道は非常に「礼」を重んじる武道であり、この「礼」をきちんと丁寧に行う事の重要性を自分の中で最近強く認識しています。丁寧な礼があるからこそ奢りや後ろ向きな気持ちが消えリセットされた謙虚な心の状態に戻れるのだと思います。
「正しい礼法に基づいた日々の絶えざる鍛錬によって、身体のあらゆる部分と機能に申し分の無い秩序を授け、且つ身体を環境に調和させて精神の統制が身体中に行き渡るようにすることを意味する。」と礼法について新渡戸稲造は「武士道」の中で述べており最近再読してみて納得しました。
心身の健康以外で合気道から頂いた事として日本の優れた伝統文化、特に武家文化の素晴らしさに触れたことが挙げられます。合気道等の武道の元を辿れば兵法に行く着くわけですが、それを稽古、探究し続けると結果的には心と体の調和、相手と自分との調和を得て内的な強さに導かれるといった点に大きな魅力や奥深さを感じます。
正直申し上げて、私は長い間西欧文化に劣等感を持っていました。しかしながら、こうした日本の武家文化の素晴らしさに触れる事で劣等感を払拭することができ、今では日本の文化を大変誇りに思っております。
これまでの9年間、非常に大勢の方々からご指導頂いた事で現在の自分があるのだと思います。技の一つ一つにしても実に大勢の方々からたくさんの助言や教えやアドバイスがあり、それが血となり肉となり技を成り立たせていると感じています。
これまでご指導頂きました須磨師範はじめ多くの先生方、諸先輩方に深く感謝申し上げたいと思います。
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