合気道は、開祖 植芝盛平翁(1883~1969)が、幾多の日本伝統の古武術の奥義を究め、更に厳しい精神修行をへて術から道へと発展させた現代武道です。そして、開祖から二代目道主 吉祥丸先生(1921~1999)に受け継がれ、現在は三代目道主 植芝守央先生の下140ヵ国、150万人を超える合気道人口を数えるに至っております。
武道の基本は、「姿勢」と「体さばき」と「技」にあると言われています。
合気道の体さばきは、「入身一足」(両者相対した時に相手の加撃の線などをはずしてそれとすれ違うように相手の死角に入る動作)。「円転の理」(腰を中心に自分の身体が回転中の独楽のように円運動を描きながら相手をさばいていく動作)。に集約されます。体さばきは常に中心があり入身、転身のさばきで相手をさばいていきます。 相手の動きを自己の動き(立体的な球状の丸い動きにより)の中に導き入れます。 そしてそこから生まれる技は、相手の暴力のみを制するもので相手の生命を殺傷しません。 合気道が「和」の武道といわれる所以もここにあります。また、心身を統一するものを合気道は「氣」という言葉で表現しています。 そしてその氣の力を呼吸力といっています。 身も心もしっかりと統一されている体勢で身体が持続的になめらかに動くことが大切であり、その為には身体のどこにも滞りがなく身体の中心へ結ぶ自分自身の核心(臍下丹田)から発出される力「呼吸力」を養成することが大切になってきます。合気道の関節技は、相手の関節が曲がる方に曲げて相手を制します。 決して「逆」をとって力ずくでねじ伏せる関節技ではありません。自然に逆らわず無理に力を加えない合気道の鍛練法は、自然の調和と安定に恵まれた予防医学的健康法に通じるといえます。また、お互いの習熟度に合わせて技を繰り返し、得手不得手が無いように左右必ず稽古し、また受けも取りも稽古することによりバランス感覚が養われ、心身の鍛練をはかることができます。 従いまして老若男女誰でも稽古を行う事ができます。 稽古の積み重ねが健康に良いのは言うまでもありませんが、日常におきましても何事にも積極的に取り組む自信が自然と培われていきます。また道場には年齢、性別、職業、国籍を問わず多くの人々が集まってきますので、稽古をすることは人間理解の眼を深めるにも最適です。
合気道の通常の稽古では、いわゆる試合形式をとらずに型の反復稽古を行います。
型といっても活きた型であって即実際に役立つ(相手を制する)ものでなければなりませんが、勝敗という相対的なものを求めるのではなく絶対的な強さを求め、お互いに切磋琢磨しあって自己の完成を願う求道であるといえます。 稽古し合っている者同志で一つの技をつくり上げ、ともに正しさを求め合い、正しさゆえの強さを習得するよう心掛ける事が「和」の精神に結びつく事にもなりますし、稽古の要締でもあります。
開祖 植芝盛平翁がしたためた「合気道練習上の心得」の中に
「練習は常に愉快に実施するを要す」という項目があります。
真に武道の心得を知る者は、むしろ肩肘の無駄な力が抜けて外見は柔和な姿に見えます。 つまり自然体で楽しく素直に修練する事が肝要であります。また道場での稽古は、いわば約束事の上での稽古です。ところが街中で突然何者かが突いてきた時、これを平常心をもって即座にかわすことができるでしょうか?平常な時に心が平常であるのは当たり前ですが、そうでない時にそうした平常心を保ち続けることが大切で、そこまでもっていくのが合気道の鍛練といえます。 合気道には、「引退」という言葉はありません。生涯現役です。 生涯をかけて自己の絶対的な強さを求め続けなければなりません。 稽古を始めたら根気よく続ける事が肝要で、また稽古を続ける事が進歩への第一歩であり稽古の大切な一面であるといえます。